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紫陽花が雨で奏でる春への別れ
紫陽花が雨で奏でる春への別れそんな季節の話
窓に写るは雨に打たれるオープンテラス
規則正しく並べられた白いテーブルと椅子に混じって
紫陽花は雨でより一層妖艶さを増していた
久しぶりの再会は
そんな都内某所のカフェだった
奥から三番目の窓際の席
昔と同じように君と向かいあう
君はオレンジピールの入ったダージリン
僕はキャラメルマキアート
限りなく表層の部分は少しも変わっていない
平日の午後3時
客足の途絶えた店内には
マスターが暇潰しに捲る新聞の音が
不規則なリズムで響いていた
君は何も語らない
僕も何も語らない
二人に降り注ぐ時間は
音もなく最後の一幕を閉じていく
言葉を奏でる隙も与えられてくれなかった
それでも雨で花を揺らし
可憐に咲き誇るは紫陽花
紫陽花が雨で奏でる春への別れ
あんなに可憐に咲きながら
あんなに可憐に咲きながら
我輩。
コーヒーの匂いがかすめたから朝だと気付くのにそう時間はかからなかった
朝はゆっくりしたいから、って
必要以上に早く目覚める君
根拠のない低血圧を理由に
これまでの人生を生きてきた僕には信じられない光景だ
朝を独り占めしたかのように
その時間を楽しんでいるのかと思いきや
今日も泣いた涙の後が傷のように残ってる
まだ泣いているの?
もう充分じゃない?
いつも以上にいつもを演じる君
僕はつらくてその顔を見てられないから
そっと君の横に座って
一緒にテレビに映るニュースキャスターを眺めるんだ
そうしているうちに
君はいつのまにか化粧も着替えも終わっていて
僕は君を見送りにいつもどおり玄関へ
君は決まって僕を三回撫でてから玄関をでる
僕は素直に受け入れる
僕は人間の言葉はわかるけど
自分では喋ることができないから
おとなしく見送るしかできない
けどいつでも君の帰りを待ってるからね
どんな時も君の帰りを待ってるからね
だから安心して、いってらっしゃい
僕は君の心のペット
いつでも君を見守るペット
誰が作ったかわからない詩
誰が作ったかわからない詩が語り継がれるように
どんな戯れ言を並べたって
結果がすべてなんだ
結果よりも大切なものを語る者が現れたのなら
まずは疑って間違いないだろう
それは疑いようのない結果