コトバ 写真

風船

君が抱えるには

重たすぎる


かかえきれないなら

風船に結んでしまって

空に飛ばしてしまおう

コトバ 写真

ミヒャエル・エルビーネの静養

犠牲と悦楽

同時に存在しうる

歪んだ空間で

唯一鮮明になったのは

文字を象った

美しき静寂だった

コトバ 写真

メランコリー

メランコリーな空気に

この世界が沈んでいく


飛べるものは

空から世界を見下している


泳げる者は

懸命に境界を維持している


溺れる者は

もがき苦しんでいる


沈む者は

浮上する術を知らない


コトバ 写真

ヘアークラック

あの瞬間

気付くことができなかったが

貴方と私の間に

ヘアークラックができていた


わずかでも

深い

それは

気付くべきだった

コトバ 写真

100点

世の中は

テストのように単純ではない


100点を目指すもの

テストのように

皆が100点を目指すことで

物事の優劣を判断する


100点をとらなければならないもの

法律のように

たとえ99点でも

1点を見落としたならば

それは犯罪となる


100点よりも優先すべきもの

プログラムのように

あえて機械で処理する部分は80点として

残りは人間で任せることで

フレキシブルに対応できるようにする


要するに

世の中を見定めてから

100点を目指すか決めるのだ

コトバ 写真

蛇腹

優しさに翻弄され

狂うように

曲がっていく


意志は固いほうだ


しかしその固さ故に

蛇腹のように

固いまま曲がっていく


他人の意見程度で

直線に戻ることもない


コトバ 写真

迷路

頭が割れるくらいの頭痛

カフェインが切れたらしい


眠くはならない

緊張感が心を支配しているから


例えれば迷路

さほど難しくはない迷路


出口には

上司という門番が

斧を持って立っている


いのちをだいじに?

ガンガンいこうぜ?


キーボードを叩きながら

カフェインを追加する

コトバ 写真

さりげなさ

さりげない優しさは

計算つくされたもの


軽はずみに信じることは

大きな過ちに繋がる


気を付けて

自分

コトバ 写真

卯月

卯月の空には

解放された華々たちの

優しい薫りが漂う


変革を求める季節がら

希望と不安が入り交じる

複雑な空気が肺を満たす


桃色の木々は

儚さを兼ね備えながら

一瞬を着飾っていく


卯月の空は

華やかに哀しい

コトバ 写真

マスカラ


22時過ぎ

メイクも直さず

パンダ目になって帰宅


友達の誘いも断り

1日のしめは

チキン味のカップラーメン


意図的にプライベートを

犠牲にしているわけではない


ただただ

断る勇気がないだけ

惰性で生きているだけ


めんどくさい

こんな生活を変えようとか

考えることもめんどくさい


そして

また朝が来ればマスカラを塗り

パンダ目になるまで働く

さよなら自分

コトバ 写真

賢さ

頭を下げる

深々と下げる


いいわけはしない

それが一番まるくおさまるから


理不尽な怒りに

論理的な解決策は皆無


謝罪を要求する人間がいて

謝罪のみで充足する人間がいるだけ


頭を下げる

下げる頭はいくらでもある


頭を下げる

謝罪の意を伝えることであり

反省の姿を見せることではあるが

非を認めているわけではない


賢さを貫くことは

とてもつらいこと

コトバ 写真

認める

認める

お互いの違いを認める

能力の差を認める

平等でない社会を認める

己の弱さを認める

己の罪深さを認める


産まれてきたことを

憎み苦しんでいるのならば

きっと

認める回路が

どこかで壊れている


不遇な人生というならば

どこかで相対的な評価を

気にしていて

他人と自分は違うのだと

認めることができていないのだ


認めることは

勝ちでもなければ

負けでもない

コトバ 写真

仕事

慣れない環境は

許容量の乏しい私を

蝕んでいく


慣れない身体を振り絞って

笑顔でお客様をお迎えする


今日も1日

お仕事がんばりましょう

コトバ 写真

叫び

虐待されて幼き命が消えた


沢山の傍観者たちは

やりきれない想いの矛先を

保護できなかった者へ向け

血祭りにあげることで

自分を納得させている


しかし悲痛な小さな叫びを

吹き消しているのは

他でもない傍観者たちである


保護することを

充実すれば気が済むのですか


保護までいかない虐待は

容認していいのですか


虐待される子供たちが溢れかえる

保護される子供が溢れかえる

直視すべきはこの異常な世界


虐待という言葉が

新聞を浸食し続けて

もはや慣れ親しんだ言葉と化している


悲痛な小さな叫びを

自分のことと考えている人は

どれだけいるのだろうか


保護できなかった者に

全ての責任をなすりつけ

終焉させてはならない

この異常な世界を傍観してはならない

私たちの時代で食い止めなければならない


悲痛な小さな叫びは

まだこの世界に響いている

幼き命が訴えたその声は

まだこの世界に響いている

だから耳をすましてちゃんと聞こう

そして何もできなかった自分を悔やもう

まずはそこからだと思う

コトバ 写真

メビウスの輪

人と違う生き方を

人と違う表現を

人と違う視点を

そうやって生きていても

所詮はメビウスの輪

残念ながら

この世界は繋がっている

繋がってしまっている

無限の可能性なんて

結局は存在しないんだよ


コトバ 写真

乱反射

残念ながら

僕に届いた光の線は

乱反射して

砕けて飛び散った


届かない想いを

見送る

やりきれない想い


儚さは

想いを綺麗に彩る



コトバ 写真

雨に唄えば

雨が降る

あの名曲を口ずさむ


きっと今幸せなんだと思う


あの映画のように

見上げた黒い雲に

太陽を見いだせるほどではないけど



日常には微かな光が散らばっていて

ささいなことで

ほんの少しの幸せを感じてしまう

そんな小さな人間なんだと思う


なんだか

そんな生き方も

悪くない気がする



コトバ 写真

エイプリルフール

ありがとう


はっきりと

もう好きじゃない

って言ってくれて


おかげで

気持ちの整理がつきました


もう未練はありません


私も幸せになるから

貴方も幸せになってください



嘘からはじまる次の人生は

悲しみを隠すように

舞い散る桜に包まれていた


コトバ 写真

行き先

行き先は決まっていない

考えがまとまっていないから

考えをまとめようとも思っていないから


仕事に支配された体は

常に物事を整理しがち

でもそこに楽しさはない


行き先は決まっていない

それでこそこの瞬間を楽しめる

コトバ 写真

ちょっとだけ

ちょっとだけ

それくらいの気持ちで


ちょっとだけ

休憩します


ちょっとだけ

お菓子を食べます


ちょっとだけ

横になります


ちょっとだけ

贅沢をします


ちょっとだけ

この世界を好きになってみます




コトバ 写真

見つける

どこかで貴方とすれ違っても

貴方を見つけることはないでしょう


たとえ貴方が視界に入っても

たとえ貴方が話しかけてきても

貴方を見つけることはないでしょう

コトバ 写真

別れ

電車に乗れた人は

きれいな別れはあると言った


電車に乗れなかった人も

きれいな別れはあると言った


二人は別れた

でも決定的に立場が違う


きれいな別れなど存在しない

無理して耐えている人がいるだけ


電車に乗れなかった人は

いつまでも見送っていた

とても素敵な光景だった

コトバ 写真

視点

世界の本質は

視点の組み合わせ


ひとつの出来事を

どう捉えるかは

視点の違い


私たちは

とても限られた視点で

暮らすことに慣れている


新しい世界はそこにある

鍵を開けるには

隠れた視点を探すだけ



コトバ 写真

定義

勝手に人を考察し

定義づけするのはやめてください


貴方のような

浅はかな人間に

できることではないのです


定義しないと不安なのでしょう

そうだと思います

貴方はその程度のレベルの人間ですから


赤ちゃんは

微笑みかければ

微笑み返してくれる

貴方にはできない

それが全てです

コトバ 写真

トンネル

未知数の課題の山をそのままに

トンネルは向こう側まで繋がっていた


解決はしていない

でも現状は乗り切る

その答えはトンネルだったのだろう


気がつけば

縦横無尽にトンネルは貫き

崩落寸前である


この国の政治家というモグラは

今日もヤジをとばしながら

トンネルを堀り続ける


コトバ 写真

ripple

平穏という幸せ

変化という不幸


生きていれば

不規則なrippleが

鼓動よりも早い振動でやってくる


おそらくこの世界の

ひとりひとりに原点があり

rippleは常に生み出され

rippleは干渉しあっている


拒絶しようとしても

他人と接すれば

rippleに干渉される


平穏という幸せ

変化という不幸


どうか静寂な海が続くように



コトバ 写真

滑走路

滑走路にいる女性は

これからどこに飛び立つか

わからないまま

走りはじめていた


別に仕事に生きる人生を望んではいない

むしろ幸せな家庭が作れれば

仕事なんてどうでもいい


しかし滑走路は用意されていた

飛び立つことは決められていた


母も父も

飛び立つことを

期待して待っている


だから走りはじめた

滑走路に留まっていれば

周囲に不安がたちこめるから


おそらく飛び立てば

それでいいのだろう

行き先は関係ないのだ

世間体を保てればそれでいいのだ


もうすぐ滑走路から足が離れる


空を飛ぶことと

墜落することは

私にとって同じこと

コトバ 写真

会話

もうやめにしよう


一生懸命

お互いが向き合って

妥協点を探してきた


しかしその一言は

全ての終焉を表す言葉だった


もうやめにしよう


会話は終わった

それは心を通わせる

最後の会話だった

コトバ 写真

タイマー

セットされたタイマーは

設定された時刻どおりに鳴った


それはあの時想定された未来であり

ただその未来がやって来なかっただけ


セットされたタイマーは

喜びも悲しみも

お構い無く鳴り続ける


コトバ 写真

デジタル

すべてが規則どおり

すべてが時刻どおり


少しもミスのない世界を望み

他人のささやかなミスが許せない


正確さは時として

人間らしさを破壊する


コトバ 写真

アイスクリーム

まるで溶けない

アイスクリームのよう

あの頃みたいな気持ちは

今はもうなくて

ずっと冷たいまま


泣きたくないから

笑うことをやめたんだ


溶けないアイスクリーム

食べられることもなく

冷凍庫の奥で身を潜める


コトバ 写真

ひなあられ

ひなあられみたいに

咲き誇る花びら


何度も通ったこの道は

淡く甘い想い出を

色鮮やかに写し出す


もう戻れないあの頃

抱いていた夢や希望は

また別の色を放ちながら

この道を照らし続ける






コトバ 写真

人生

良き人生とは

人様に迷惑かけずに

人様から迷惑をかけられずに

穏やかに

その日を迎えること

コトバ 写真

あのね

あのね

こぼれそうな笑顔で

君はとっておきの話を切り出す


あのね

ずっとこの瞬間を待ち望んでいたように

君は聞いて欲しい気持ちが先走る


あのね

そう言って話しはじめる君を

今日も思い浮かべながら

帰りの電車を待っている



コトバ 写真

降り始めの雪

愛は降り始めの雪

掴んだと思っても

手の中には何もない


それくらい不確かなものだから

手に入れたとか

失ったとか

そんなことは

そもそも意味がないのかもしれない


愛は降り始めの雪

掴んだと思っても

手の中には何もない


けれど雪はいつか積もる

そんな日が訪れますように

貴方が愛で溢れますように







コトバ 写真

背景

味気ない人生を

華やかに魅せるために

できるだけ背景を描きこんでいく


オフィーリアが

溺れ死ぬ前に

華やかな世界に囲まれたように


悲しいくらい無能な自分でも

背景が華やかであれば

きっと素敵な人生だったって

笑って死んでいけるのではないだろうか


コトバ 写真

自分

欲しがることをやめた

きっと手に入らないから

悲しくなるだけだから


優しくなることをやめた

きっと裏切られるだけだから

悲しくなるだけだから


素直になることをやめた

きっと騙されるだけだから

悲しくなるだけだから


生まれてきたままの自分をやめた

きっと自分は受け入れられないから

悲しくなるだけだから


自分は自分と言える人たちは

きっと強い人たちなんだと思う

コトバ 写真

ハリネズミ

自己顕示という

鋭い針を他人に向けて

なんとか自己を保っている


自己を保てば

他人の心を針で刺し

結局他人は離れていく


それが彼の性格といってしまえば

それまでなんだけど


きっと刺していることはわかっている

痛みはわからないだろうけど


彼は悲しきハリネズミ





コトバ 写真

賞味期限


目の前に与えられた

賞味期限切れの

ガラスでできた幸せは

すぐに価値のないものになるのだろうけど

大切に大切に

少しでも長く余韻に浸っていたいんだ


論理的に考えれば

今がよければそれでいい

なんて考えはやめた方がいいとは思う

でもね

わかっているけどやめられない

コトバ 写真

追い焚き機能

気持ちが冷めてしまったらしい

追い焚き機能はどこにあるの

コトバ 写真

デジカメ

デジカメは

この世界の一瞬を

簡単に切り取ることができる



何気ない気持ちで

シャッターを押せば

一瞬が永遠に残る


懐かしさを通り越して

生々しさを感じるほどに

残り続ける


この写真に映る自分は

何を考えていたのだろう


一度きりの人生

誰もが口にするような

ありふれた言葉だけど

今やっとその意味がわかる気がする


写真の自分は

果てしなく広がる未来に

多少の無駄や回り道も

別に大したことないと感じている


でも今の自分は違うんだ


未来には期限がある

期限があるから焦りがある

だから一瞬が狂おしいほどに大切なんだ


シャッターを押しても

手に入らないこの一瞬を愛そう

コトバ 写真

チーク

今日はチークが濃すぎた

普段の私と

今日の私を

見比べる人なんて

どこにもいないのだから

別にどうでもいいのだけど

コトバ 写真

裏口

優しさを押し売りするセールスマンが

インターホンの画面越しに確認できたので

裏口から逃げたいと思います

コトバ 写真

眼鏡

眼鏡よ

眼鏡

この世界から

見たくないものを

見せないようにしてください



眼鏡よ

眼鏡

せめて醜いものを

美しいもののように見せてください


眼鏡よ

眼鏡

何もかもをゆがませて

原型もわからないほどに

コトバ 写真

ニュースキャスター

得意気に正義を振りかざし

乏しい想像力で動機を推測し

解決気分に浸って満足する


今日もニュースキャスターは

高貴なフォークを上手に使って

他人の傷口をえぐり尽くし

ごちそうさまと幕を閉じる

コトバ 写真

ひとつ

触れて気付く

皮膚の隔たり


身体が邪魔になる


ひとつになれない

もどかしさ





コトバ 写真

宇宙

宇宙服が邪魔だから

上質な生地のドレスを纏おう


遠い太陽の灯りで

大切な愛読書を読もう


本物の流星群が飾る壁紙に囲まれて

Mr.Childrenの曲を流そう


すべてが終わる前だからこそ

日常を噛み締めよう


コトバ 写真

果実

その果実は

打ちつける冷たい雨に耐えて

太陽をたくさん浴びて

ここまで育ってきた


実りの頃

ついに収穫がはじまる


今か今かと

収穫を待っている者達の中には

不安と焦りを混ぜ合わせた

耐え難い空気が流れはじめる


しかし収穫は一瞬で

悲しいほどに

ほとんどが運任せ

夢見た瞬間とは程遠い


さらに運命はその後も続く

収穫をゴールと思った者達は

その後どう調理されるか

想像すらしていなかった

中には収穫されたにも関わらず

食べられずに棄てられていく


その果実は

打ちつける冷たい雨に耐えて

太陽をたくさん浴びて

ここまで育ってきた


収穫が全てではない

果実は自分を大切にしようと思った








コトバ 写真

涙の跡

いつしか涙は渇いて

傷のような跡を残していた


その跡は

心臓まで達していて

鼓動するたびに

酷く痛んだ


もうすぐ

もうすぐだと思う


そうやって

根拠のない希望を設定し

痛みに耐えてきた


こんな自分を

どうしようもなく思う日も

あるかもしれない


でもね

たぶんこの世界の多くの人は

同じように生きていると思う


涙の跡が乾いた貴方の手を

そっと握りしめる

そしてこう語りかけた

もうすぐ

もうすぐだと思う

コトバ 写真

北極星


寝る時間を惜しんで

懸命に自分の居場所を確保する


他人に尽くすためには

それと天秤にはかれるくらい

自分を維持する必要がある


世界の地軸に対して

垂直に伸びる平均台

ぐらついても落ちないように


神経は摩耗していき

喉は唾が音をたてて胃に落ちる


それでも北極星は消えていない

いつかすべてが終わった日でも

北極星は消えていないだろう