コトバ

赤い屋根の家

欅の並木道を

一本入ったところに

赤い屋根の家があった


庭もきちんと手入れがされていて

この季節には薔薇のにおいが鼻をかすめた


その家は

年老いたおばあちゃんがひとりで住んでいる


おばあちゃんは占いが得意で

小さい頃はよく遊びに行った


いつも笑っていて優しくて

帰りにいつも黄色い包み紙の飴をくれた


今日会社の近くのスーパーで

あの黄色い包み紙の飴を見つけた


あの赤い屋根の家はもう今はない

いつも空車のコインパーキングになっている


だけど駐車場の一角に花壇が設けられていて

数本の薔薇が咲いているんだ


今日久しぶりにこの場所に立ち寄った

かすかな薔薇のにおいの中で

あの飴を舐めて

おばあちゃんにさようならを言った