コトバ

ファンデーション

東京駅の八重洲口

21時ちょうど発の

大阪行き深夜バスに乗り込む


席は指定席で

トイレの目の前

ちゃんと確認すればよかった



駅弁というには

ひどくお粗末で

鮭のおにぎりと緑茶のペットボトルを

鞄から取り出す

でも食べる気がしない


喪服はクリーニング代が高いから

シワにならないよう

丁寧にジャケットを畳んで

隣の空いている席に置く


この世の中から

一人の人間がいなくなっても

地球の自転は変わらない


いくらたくさんの悲しむ人間がいても

昨日と同じように

機械的に朝日は昇る


でも

さっき落としたファンデーションは

粉々になって壊れていた

たった一回落としただけなのに

もう元には戻らない