コトバ 写真

行き先

行き先は決まっていない

考えがまとまっていないから

考えをまとめようとも思っていないから


仕事に支配された体は

常に物事を整理しがち

でもそこに楽しさはない


行き先は決まっていない

それでこそこの瞬間を楽しめる

コトバ 写真

ちょっとだけ

ちょっとだけ

それくらいの気持ちで


ちょっとだけ

休憩します


ちょっとだけ

お菓子を食べます


ちょっとだけ

横になります


ちょっとだけ

贅沢をします


ちょっとだけ

この世界を好きになってみます




コトバ 写真

見つける

どこかで貴方とすれ違っても

貴方を見つけることはないでしょう


たとえ貴方が視界に入っても

たとえ貴方が話しかけてきても

貴方を見つけることはないでしょう

コトバ 写真

別れ

電車に乗れた人は

きれいな別れはあると言った


電車に乗れなかった人も

きれいな別れはあると言った


二人は別れた

でも決定的に立場が違う


きれいな別れなど存在しない

無理して耐えている人がいるだけ


電車に乗れなかった人は

いつまでも見送っていた

とても素敵な光景だった

コトバ 写真

視点

世界の本質は

視点の組み合わせ


ひとつの出来事を

どう捉えるかは

視点の違い


私たちは

とても限られた視点で

暮らすことに慣れている


新しい世界はそこにある

鍵を開けるには

隠れた視点を探すだけ



コトバ 写真

定義

勝手に人を考察し

定義づけするのはやめてください


貴方のような

浅はかな人間に

できることではないのです


定義しないと不安なのでしょう

そうだと思います

貴方はその程度のレベルの人間ですから


赤ちゃんは

微笑みかければ

微笑み返してくれる

貴方にはできない

それが全てです

コトバ 写真

トンネル

未知数の課題の山をそのままに

トンネルは向こう側まで繋がっていた


解決はしていない

でも現状は乗り切る

その答えはトンネルだったのだろう


気がつけば

縦横無尽にトンネルは貫き

崩落寸前である


この国の政治家というモグラは

今日もヤジをとばしながら

トンネルを堀り続ける


コトバ 写真

ripple

平穏という幸せ

変化という不幸


生きていれば

不規則なrippleが

鼓動よりも早い振動でやってくる


おそらくこの世界の

ひとりひとりに原点があり

rippleは常に生み出され

rippleは干渉しあっている


拒絶しようとしても

他人と接すれば

rippleに干渉される


平穏という幸せ

変化という不幸


どうか静寂な海が続くように



コトバ 写真

滑走路

滑走路にいる女性は

これからどこに飛び立つか

わからないまま

走りはじめていた


別に仕事に生きる人生を望んではいない

むしろ幸せな家庭が作れれば

仕事なんてどうでもいい


しかし滑走路は用意されていた

飛び立つことは決められていた


母も父も

飛び立つことを

期待して待っている


だから走りはじめた

滑走路に留まっていれば

周囲に不安がたちこめるから


おそらく飛び立てば

それでいいのだろう

行き先は関係ないのだ

世間体を保てればそれでいいのだ


もうすぐ滑走路から足が離れる


空を飛ぶことと

墜落することは

私にとって同じこと

コトバ 写真

会話

もうやめにしよう


一生懸命

お互いが向き合って

妥協点を探してきた


しかしその一言は

全ての終焉を表す言葉だった


もうやめにしよう


会話は終わった

それは心を通わせる

最後の会話だった

コトバ 写真

タイマー

セットされたタイマーは

設定された時刻どおりに鳴った


それはあの時想定された未来であり

ただその未来がやって来なかっただけ


セットされたタイマーは

喜びも悲しみも

お構い無く鳴り続ける


コトバ 写真

デジタル

すべてが規則どおり

すべてが時刻どおり


少しもミスのない世界を望み

他人のささやかなミスが許せない


正確さは時として

人間らしさを破壊する


コトバ 写真

アイスクリーム

まるで溶けない

アイスクリームのよう

あの頃みたいな気持ちは

今はもうなくて

ずっと冷たいまま


泣きたくないから

笑うことをやめたんだ


溶けないアイスクリーム

食べられることもなく

冷凍庫の奥で身を潜める


コトバ 写真

ひなあられ

ひなあられみたいに

咲き誇る花びら


何度も通ったこの道は

淡く甘い想い出を

色鮮やかに写し出す


もう戻れないあの頃

抱いていた夢や希望は

また別の色を放ちながら

この道を照らし続ける






コトバ 写真

人生

良き人生とは

人様に迷惑かけずに

人様から迷惑をかけられずに

穏やかに

その日を迎えること

コトバ 写真

あのね

あのね

こぼれそうな笑顔で

君はとっておきの話を切り出す


あのね

ずっとこの瞬間を待ち望んでいたように

君は聞いて欲しい気持ちが先走る


あのね

そう言って話しはじめる君を

今日も思い浮かべながら

帰りの電車を待っている