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雪の笑顔
やけに寒い風が吹き抜ける
ちらちらと粉雪が空を舞いはじめて
僕等の深い傷に染み込んだ
吐いた息が白く前を霞め
一瞬君の顔が薄れていく
冷えきって震えてる君のその細い肩を
温めるのはもう僕じゃない
夢見た理想と現実を近づけることに夢中になりすぎて
忙しい毎日の中で恋愛は影を潜めていった
気付くと君の笑顔は他の誰かのもの
だから僕を忘れて
頬に伝わる涙とめて
僕はこれ以上君の優しい笑顔に傷をつけたくないから
この降りしきる雪が君のマフラーを白く染める
そして雪化粧した君は静かに僕にそっと呟いた
ごめんね、と
いつの間にか雪は姿を消し雲が月から逃げてった
二人に残された希望の光
それは別れることだけで
さよならの言葉雪に混ぜて僕らは互いに歩きだした
二人が歩む足跡には歯痒さが埋もれていた
僕は君を忘れない
例え君が僕を忘れても
雪は明日にもすぐに溶けてしまうだろう
君もそこにはもういない
君が最後に見せた涙に濡れた雪の笑顔
別れの時までずっと君は優しく
僕にそっと呟いた
ありがと、と
時計の針が止まる頃に
今を振り返れるのなら
僕は疑わずに言えるだろう
確かに幸せだったと
だから僕を忘れて
頬に伝わる涙とめて
僕はこれ以上君の優しい笑顔に傷をつけたくないから
この降りしきる雪が君のマフラーを白く染める
そして雪化粧した君は静かに僕にそっと呟いた
ごめんね、と
紫陽花が雨に打たれて夏を呼ぶ
紫陽花が雨に打たれて夏を呼ぶそんな季節の話
夕食を食べ終えた二人は
ソファーに深々と座り寄り添っていた
いつも威勢がいい君を
冗談で攻立てた
笑いながら笑いながら
君のリアクションを楽しんでいたのに
でも君は途中で諦めて
ごめんなさいと謝った
今度は君を楽しませようと
冗談でわかりきった嘘をつく
君は嘘を信じたふりして
笑いながら笑いながら
君との会話を楽しんでいたけど
途中でそんな自分に疲れてしまい
嘘で笑わせることをやめた
二人が作った空気の間を
虚しく流れるテレビのニュース
今日も子供が人を殺めたらしい
食卓にはデザートで出された赤い西瓜
一口も食べられずに残されていた
あと一時間後には
生ゴミの袋へ捨てられているだろう
お風呂からあがってくると
君はすでに眠りにおちていた
少しの笑顔もない顔で
君は夢の何処かを彷徨っていた
カーテンを閉めて
冷蔵庫に入っていた
野菜ジュースを飲んで
そしてこの前 処方された
精神安定剤を飲んで
君のとなりに静かに横たわる
二人に降り注ぐ時間は
せっかく作った砂のお城を
無表情に壊す雨のように
残酷に二人を裂いていく
でもそんな雨に打たれても
可憐に咲き誇るは紫陽花
紫陽花が雨に打たれて夏を呼ぶ
あんなに可憐に咲きながら
あんなに可憐に咲きながら
コインとウルトラマリン
ずっとにぎりしめていた2枚のコインウルトラマリンを溶かした海を目がけて
思い切り、思い切り投げてみた
それは数学の教科書にのっていた放物線の形を描いて宙を舞い
小さな音をたてて、沈んでいった
もう見つかることはないから
ゆっくりおやすみ
コピー
たとえば明日死ぬことがわかっているとして今ならあなたのコピーを作れます、と言われたら
あなたはどうしますか
それはあなたであってあなたでありません
でも親しい人々にあなたの死の悲しみを与えることは避けられます
人々の記憶の中に本当のあなたが死ぬという事実は刻みこまれません
それがいやだというなれば
コピーを作らないというなれば
あなたは死を受け入れているのではないでしょうか
死を誰にも譲りたくないのではないのでしょうか
何が言いたいかというと
人は死ぬために生きるとか
そんなつまらないことを決して言いたいのではなくて
この世界が成り立っているのは
いや、この世界が成り立つためには
あなたのわがままが必要だということです
これって素敵なことではありませんか