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2005年11月24日木曜日
雪の笑顔
やけに寒い風が吹き抜ける
ちらちらと粉雪が空を舞いはじめて
僕等の深い傷に染み込んだ
吐いた息が白く前を霞め
一瞬君の顔が薄れていく
冷えきって震えてる君のその細い肩を
温めるのはもう僕じゃない
夢見た理想と現実を近づけることに夢中になりすぎて
忙しい毎日の中で恋愛は影を潜めていった
気付くと君の笑顔は他の誰かのもの
だから僕を忘れて
頬に伝わる涙とめて
僕はこれ以上君の優しい笑顔に傷をつけたくないから
この降りしきる雪が君のマフラーを白く染める
そして雪化粧した君は静かに僕にそっと呟いた
ごめんね、と
いつの間にか雪は姿を消し雲が月から逃げてった
二人に残された希望の光
それは別れることだけで
さよならの言葉雪に混ぜて僕らは互いに歩きだした
二人が歩む足跡には歯痒さが埋もれていた
僕は君を忘れない
例え君が僕を忘れても
雪は明日にもすぐに溶けてしまうだろう
君もそこにはもういない
君が最後に見せた涙に濡れた雪の笑顔
別れの時までずっと君は優しく
僕にそっと呟いた
ありがと、と
時計の針が止まる頃に
今を振り返れるのなら
僕は疑わずに言えるだろう
確かに幸せだったと
だから僕を忘れて
頬に伝わる涙とめて
僕はこれ以上君の優しい笑顔に傷をつけたくないから
この降りしきる雪が君のマフラーを白く染める
そして雪化粧した君は静かに僕にそっと呟いた
ごめんね、と
2005年7月7日木曜日
紫陽花が雨に打たれて夏を呼ぶ
紫陽花が雨に打たれて夏を呼ぶそんな季節の話
夕食を食べ終えた二人は
ソファーに深々と座り寄り添っていた
いつも威勢がいい君を
冗談で攻立てた
笑いながら笑いながら
君のリアクションを楽しんでいたのに
でも君は途中で諦めて
ごめんなさいと謝った
今度は君を楽しませようと
冗談でわかりきった嘘をつく
君は嘘を信じたふりして
笑いながら笑いながら
君との会話を楽しんでいたけど
途中でそんな自分に疲れてしまい
嘘で笑わせることをやめた
二人が作った空気の間を
虚しく流れるテレビのニュース
今日も子供が人を殺めたらしい
食卓にはデザートで出された赤い西瓜
一口も食べられずに残されていた
あと一時間後には
生ゴミの袋へ捨てられているだろう
お風呂からあがってくると
君はすでに眠りにおちていた
少しの笑顔もない顔で
君は夢の何処かを彷徨っていた
カーテンを閉めて
冷蔵庫に入っていた
野菜ジュースを飲んで
そしてこの前 処方された
精神安定剤を飲んで
君のとなりに静かに横たわる
二人に降り注ぐ時間は
せっかく作った砂のお城を
無表情に壊す雨のように
残酷に二人を裂いていく
でもそんな雨に打たれても
可憐に咲き誇るは紫陽花
紫陽花が雨に打たれて夏を呼ぶ
あんなに可憐に咲きながら
あんなに可憐に咲きながら
2005年5月18日水曜日
白線の内側に下がってお待ち下さい
白線の内側に下がる瞬間その次の電車に乗ることはまだ確定していない
ひとつ遅らせることも可能
決められたレールの上を走るのは
何も自分の意志がないわけじゃないんだ
2005年5月15日日曜日
コインとウルトラマリン
ずっとにぎりしめていた2枚のコインウルトラマリンを溶かした海を目がけて
思い切り、思い切り投げてみた
それは数学の教科書にのっていた放物線の形を描いて宙を舞い
小さな音をたてて、沈んでいった
もう見つかることはないから
ゆっくりおやすみ
2005年5月12日木曜日
コピー
たとえば明日死ぬことがわかっているとして今ならあなたのコピーを作れます、と言われたら
あなたはどうしますか
それはあなたであってあなたでありません
でも親しい人々にあなたの死の悲しみを与えることは避けられます
人々の記憶の中に本当のあなたが死ぬという事実は刻みこまれません
それがいやだというなれば
コピーを作らないというなれば
あなたは死を受け入れているのではないでしょうか
死を誰にも譲りたくないのではないのでしょうか
何が言いたいかというと
人は死ぬために生きるとか
そんなつまらないことを決して言いたいのではなくて
この世界が成り立っているのは
いや、この世界が成り立つためには
あなたのわがままが必要だということです
これって素敵なことではありませんか
2005年5月10日火曜日
あの雲まで飛ぶ紙飛行機
君が折った紙飛行機あの雲まで飛ぶらしい
じゃあ飛ばしてみてよ、というと
君は、絶対やだという
なぜ、と聞くと
落ちた時に先端が折れて壊れてしまうから、だって