コトバ
写真
滑走路にいる女性は
これからどこに飛び立つか
わからないまま
走りはじめていた
別に仕事に生きる人生を望んではいない
むしろ幸せな家庭が作れれば
仕事なんてどうでもいい
しかし滑走路は用意されていた
飛び立つことは決められていた
母も父も
飛び立つことを
期待して待っている
だから走りはじめた
滑走路に留まっていれば
周囲に不安がたちこめるから
おそらく飛び立てば
それでいいのだろう
行き先は関係ないのだ
世間体を保てればそれでいいのだ
もうすぐ滑走路から足が離れる
空を飛ぶことと
墜落することは
私にとって同じこと
コトバ
写真
もうやめにしよう
一生懸命
お互いが向き合って
妥協点を探してきた
しかしその一言は
全ての終焉を表す言葉だった
もうやめにしよう
会話は終わった
それは心を通わせる
最後の会話だった
コトバ
写真
セットされたタイマーは
設定された時刻どおりに鳴った
それはあの時想定された未来であり
ただその未来がやって来なかっただけ
セットされたタイマーは
喜びも悲しみも
お構い無く鳴り続ける
コトバ
写真
すべてが時刻どおり
少しもミスのない世界を望み
他人のささやかなミスが許せない
正確さは時として
人間らしさを破壊する
コトバ
写真
まるで溶けない
アイスクリームのよう
あの頃みたいな気持ちは
今はもうなくて
ずっと冷たいまま
泣きたくないから
笑うことをやめたんだ
溶けないアイスクリーム
食べられることもなく
冷凍庫の奥で身を潜める